1日を終え、俺、芹沢海斗は家に帰ってきた。




「まず宿題から片付けようかな。その後、復習して…」




なんて考えていると窓に石をぶつけられたような音が聞こえる。




コツコツ






「ん?なんだ?」






おもむろにカーテンを開けるとそこには堅苦しい服を着た七瀬の兄ちゃんがいる。





「は?え…七瀬の兄ちゃん…」





驚きを隠せず、口を開けたまま固まっていると、窓を開けるように指示される。





わけも分からないまま俺は窓を開ける。




「やぁ、海斗。びっくりさせちゃったかな。」




「びっくりっていうか、死んだんじゃなかったのか…?実は生きてたとか……それにその服は…」




「いや、死んでるよ。今は冥界で暮らしてるんだ。」





「冥界って、死者が集まる所…」





「そ。そこで王の補佐をしてるのさ。これでもなかなかの地位なんだぞ。」





「だから、その服か…。それにしても何でここに…⁇それに七瀬は?」





「七瀬にはもう会いに行ったよ。お墓参りに来てくれた時にね。今日は海斗にお願いがあってきた。」






「そうか、七瀬とは会ったんだな…。それでお願いって…⁇」




「あぁ。海斗にこれを使ってほしい。」





そう言って綺麗な白の紙と黒いチョークのようなものを渡された。





「これは…?」





「海斗はこの色になるんだな……」






「え?色が何?」





「いや、なんでも無い。それはコマンドを使うための道具だ。」






「コマンド?」





「あぁ、コマンドっていうのは決められた単語の後に自分が実行したい内容を書けば、不可能なことも可能にできる、そんな物だよ。」





「不可能な事を可能に…か。それでその単語って?」





「〈predict〉と〈heal〉だ。意味はわかるか?」




「〈predict〉は予測する。〈heal〉は治すって事かな。」




「うん。例えばその紙に〈predict〉って書くとする。その後に未来の時間を書けばその時間に何が起きるか予測することができる。」




「なら〈heal〉は何か治したいものを治せるって事か。」




「そゆこと。ついでに〈predict〉の予測は必ず当たるとは限らない。普通は当たるんだけど、異常事態によっては変わることがあるんだ。それだけ気をつけて。」




「そうか…」




「そしてコマンドを使うにあたって、海斗自身の体力が消費される。休めば回復するから無理して使わないように。」





「 わかった。でもなんでこれを俺に?七瀬でもよかったんじゃ無いか?」




「詳しくは言えないけど、遊佐さんが危ないんだ。」





「遊佐?どうしてここで遊佐の名前が出てくる?」





「詳しくは言えない。けど海斗にしか救えないと思う。その気持ちが証明してるよ。」





「え、気持ちって…」





「遊佐はさんの事好きなんだろ?バレバレだよ。だからこそ海斗に頼んでるんだ。」





「わかった。俺があいつを救う。」




「ありがとう。くれぐれも無茶はしないように。」






「うん。ありがとう。」




「じゃあ俺はそろそろ戻るよ。向こうで仕事もあるしな。」





「そうか、また来てくれよ。」





「うん、来れたらくるさ。じゃぁ頑張れよ。」




「あぁ。」







そういって七瀬の兄ちゃんは消えた。




まだ俺が小さかった頃、七瀬と3人で公園でよく遊んだ。



自分の兄貴のように慕っていた彼は突然事故で亡くなった。




もう一生会えないんだと思っていた人に今会えた。




このコマンドでとにかく遊佐を救う。




何から救うかはよくわからないが、とにかくやってみるしかない。




俺はそう誓い、もらった紙とペンを無くさないようにしまった。



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