屋上で1人、昼ごはんを食べている。
(あれ、1人ってこんな感じだったっけ…)
美香は昔から友達には困らず、持ち前のルックスや話術で自然と人が寄ってくるタイプだった。
そのためこんなに特定の誰かとつるんでいるという状況は今までにない。
ましてや友達がいなくてお昼1人、何てことはありえなかった。
(でも、今は1人で楽かも…きっと楓も気にしてる…私ばっかり気にしてちゃダメだ…)
「おい、小娘。ほんとにそれでいいのか⁇」
(え、何、誰か何か言ったの…?)
私はふと見上げるとそこにはガタイのいい、黒ずくめの人がいる。
「だ、誰…?」
「私か⁇私の名はオルクス。冥界で王という職業をやっている。」
「め、冥界……って死者が集まるっている…?」
「いかにも。お主はめでたく私の力を授けるのに相応しい者であると判断された。よって特別な力を授けよう。」
「ち、ちょっと待って。いきなりそんなこと言われてもわかんないんだけど…。そもそも私は今ここで1人でご飯食べてて、考え事してて…」
「その考え事。どうにかしたのいのではないか?」
「そりゃどうにかできるならしたい。でも出来ないからこうして悩んでるんじゃない。」
「その悩み、私の力を持って解決出来るとしたら?使うか?」
「使うか?ってそんな、わかんないよ。それに力って何のことかよくわかんないし、代償とかありそうだからやだよ。」
「代償か…。代償は何かと言われたら体力だな。まぁ休めば回復するがな。」
「体力が代償?嘘に決まってるわ。どうせそう言って後から命を取りにくるに決まってる。」
「嘘じゃない。そもそも命なんてものには興味がない。冥界にいるってことは現世に未練は残してないってことだからな。」
「そう。だとしてもどんな力かもわからないのに押し付けられても困るわ。」
「そうか、なら見せよう。我の力を。お主、ここからは下に車が停まっているのが見えるか?」
「あぁ、見えるわよ。」
「今からお主に渡す予定のこの紙とペンを見てろ。」
そう言ってオルクスは何かを書き始める。
紙を覗くとそこには
〈control〉下にある車を破壊
と書いている。
「いいか、見てろよ。」
私は息を飲んで紙と車を交互に見つめる。
すると紙から文字が消えた。
驚いている間もなく、下にあるクルマが壊れた。
「うそ…爆弾かなんか仕掛けたとか……」
「無茶いえ。爆弾なんぞ仕掛けたら他の車も壊れるだろう。よく見ろ。あの車だけきれいに壊れてるだろ。」
確かにオルクスの言う通り、爆弾や爆発物を使ったらもっと大きな音が出て周りを巻き込むはずだ。
しかし指定した車だけ、不自然なくらいきれいに破壊されていた。
「どうだ、信じたか?」
「一応…その力のことは信じておくわ。」
「ならこの力、欲しいか欲しくないか?どっちだ。」
「欲しい………私に下さい。」
「ならばこの紙とペンを与える。使い方はさっき見た通り。代償の体力のことも忘れるなよ。」
「わかった…ありがとう…」
「では健闘を祈る。」
そう言ってオルクスは消えた。
ハッと我に帰り、辺りを見渡すといつもの風景。
すごい長い時間に感じたが、ものの5分も経っていない。
下を見ると車が壊れているのが見える。
そこを誰かが通り、車の破壊に気づいた。
その人は慌てて校舎内に戻っていく。
(きっと誰が壊したとか、騒ぎになるんだろうな…)
そんなことを考えながら昼ごはんを終え、教室に戻った。