「その〜………だから、…ごめんなさい」





神崎に告白された翌日、朝。





私は神崎のクラスに行き、神崎に返事をしていた。






じっとこっちを見ている神崎は、昨日のおどおどした雰囲気はなく、ただ真っ直ぐ私だけを見ていた。







「……理由を、聞いてもいいですか?」





ぽつり、呟いた神崎の声は、心なし沈んでいるように感じた。








「えっと……その、私、神崎のことよく知らないし……話したの、一昨日が初めてだし」






「…ぇ……」




私の言葉に驚いたような彼は、一瞬泣きそうな顔をしたけれど、すぐに戻った。






「………そう、ですか……」







「………うん…………」







下を向いてしまった神崎を見ていると、なんだか私がいじめているように思えてくる。






いやぁ………こういうとき、どうしたら…。





なんて言葉を返したらいいのか全くわからない。




ただ、返事するのに朝は間違いだったかと思った。






………沈黙がいたい。




………もう、なんか言った方がいい?







私は意を決して口を開いた。





「あ…」






と、その声が神崎の吐く息と重なった。







驚いて口を閉じると、神崎は二、三度深呼吸した。







そして。







「わかりました」






私を見て、微笑んだ。







とても可愛らしい笑みだったけど。





なんだか少し泣きそうに見えた。






………この顔をさせてるのは、私だ。





「それじゃあ、また」





「うん……」






悲しそうな笑顔を残して、神崎は教室に入っていった。






その背中に、何か言葉をかけたくなったけど………………無理だった。






あの顔をさせてるのは、悲しませたのは私なのに、なんて声をかけるっていうんだ。







……私には、まだわかんないんだよ。





こういうとき、なんて言葉が欲しいのか。








だって私。







…………恋したことなんてないもん。