そして次の朝。
靴を脱いで自分のロッカーを開けようとすると。
「おはよーござんす美花さん」
ふぁーとあくびをしつつ独特な挨拶をしてくれた真希。
に、半笑いでおはようと返すと。
「ってか今日いつもよりくるの遅くね」
と、靴を脱ぎながら聞かれた。
真希、しゃがむ時足閉じようか。
「うん、寝坊した」
「めっずらしー」
へーと少しだけ驚いた感じの真希。
「まぁ、そういう時もあるよね…」
と、適当に返しつつロッカーを開ける。
「………あれ」
「なになにどしたー……およ?」
私の声に反応した真希は、私のロッカーを覗き込んで、奇っ怪な声を出した。
そして。
「すくな」
と、一言言い捨てた。
「……少ないね、いつもより」
何が少ないのかというと。
「あのいつもは溢れ出さんばかりのファンレターが……減った」
ファンレターかはともかくとして。
真希が説明してくれたように、いつもはたくさん入っていた手紙(全て女子から)が、減っていた。
「なんだろ、やっと私が女子だって気づいたのかな」
「前から気はついてたと思うよ」
じゃあなんだろ。
「………思い当たらないな」
うーむ、と自分の行動を振り返るも、まったく身に覚えがない。
そんな私の隣で。
「………………私はあるけどね」
真希が、ボソりと呟きながら、なんとも言えない顔をした。
「え?なになに、教えてよ」
私にわからないのにわかってしまうのか。
少しだけ真希を見直した。
ここで見直すってのも変な話だけど。
そして複雑な顔を浮かべた真希は、うーんと唸ってから。
「んー、教える前に確かめるわ」
と言って、歩き出した。
「あ。真希待って!」
私も慌てて靴を履き、真希のあとを追った。