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北澤さんとわかれて、家に帰って。






「……やっ、た!!!っしゃ!!」






自分の部屋のベッドに倒れ込むなり、枕に顔をうずめて足をばたつかせた。





腕だけで荷物をあさり、ジンベエザメを取り出すと、抱きしめる。





「めっっちゃ嬉しい!!」




北澤さんが、また2人で出かけてくれるって!!





やばい、どうしよう。




それだけで、すごく嬉しくて。





「……今日の北澤さん、可愛かったなぁ…」





カメで顔を隠そうとしているときとか、カメを抱きしめた時の笑顔とか。





「………あー、もー………好き…」







1年の時から、目で追っていた。






ホントは嬉しくないのに、みんなのイメージを崩したくないっていう彼女を。





人が困っていたら手を貸してしまう彼女を。






いつの間にか、目で追っていた。






彼女……北澤 美花さんは、一体どんな人なんだろう。








入学式、男子列に並ぶ僕は、不思議そうな、珍しいものを見るような目で見られていて。





僕は、それがすごく嫌で。





そんなとき、彼女を見つけた。




女の子に思うのは失礼なことだけど、僕は、彼女を羨ましいと思ったんだ。






あんなふうになりたい。



男っぽく、強くなりたい。






そう思ってて。





けれどあの日、君が女の子に告白されているのを見て。







困っているその顔をみて、僕と同じだと思った。





もしかしたら、僕の気持ちをわかってくれるかも。





そんなふうに考えていて。




君と仲良くなりたかった。




友達になりたくて。













きっかけが欲しかった。




僕は思うだけで行動できない弱虫だから。





でも、なにかきっかけがあればって。





そうやって過ごしている時に、君が話しかけてくれた。





嬉しかったんだ、僕。




そして、君の言葉を聞いて、僕は自分が情けなくなった。





嫌だ嫌だと言うだけで、人の気持ちを見ていないように思えて。





君が、かっこよくて。






本当に、君になりたいと思った。







けど、次の瞬間。






『……かわいい』




そう言ってぬいぐるみを抱きしめた君が。





可愛くて。





すごく、可愛らしく見えて。





ギャップ、というやつかもしれない。






とにかく、あの時の僕にはとても可愛らしく見えた。