「嫌いでした?」
神崎の不安そうな声がした。
そして同様に、神崎の顔も不安そうだった。
「ううん、好き。でもビックリしたな。私ってあんまり好きそうじゃないと思われるみたいだから」
あはは、と笑いつつも少しだけ心が落ち込む。
「まぁ、実際似合わないから仕方ないんだけどね」
落ち込むと、少し自虐的になってしまうのは私の悪い癖だな。
と思いながらカメの頭を撫でる。
神崎みたいに、可愛いものが好きって言えるようになれたらいいのにな。
でもみんなのイメージを壊すなんて、そんな勇気なくて。
言えないまま、ずっとそうなのかな。
そうやって考え込んでいると、カメを撫でていた手に神崎の手が重なった。
その手が意外にも私のものより大きいことをそのとき初めて知った。
「僕からみたら、北澤さんはとても可愛いです」
………………え?
可愛い?私が?
どう考えてもそう言っている神崎のほうが。
「覚えてないだろうけど、僕と北澤さん、実は一年前に会ってるんですよ」
………………………え。
「えええ?!」
私のリアクションを見て、ははは、と楽しそうに笑った神崎。
彼は私から目をそらすと、何かを思いだすように目を伏せた。
「1年の時、僕可愛いって言われることが嫌いで。そんなとき北澤さんに会ったんです」
「女子に告白されて、その後1人になったとき複雑そうな顔してて……」
「なんか、僕と似てるって思ったんです」
懐かしむように話す神崎は、なんだか幸せそうだった。
「それから、一方的に気になっちゃって。いつか話したいなーって思ってて…一年前に、やっと話せたんです」
そんなに前から気にしてくれていたのかと思うと、少し胸が暖かくなった。
「僕が先輩にもらったぬいぐるみをたくさん抱えていたら、北澤さんが話しかけてくれたんです」
………したっけか。
まったく記憶にない。
「なんて言ったの?私」
「たくさんあって持ちにくいでしょ、紙袋使う?って」
……記憶にない。
ていうかよくジャストタイミングで紙袋持ってたね私。
「すごく嬉しかったんです。北澤さんの優しさも、僕を見たときの周りの反応と違ったのも」
周りの反応と違う、ってどういうこと?
そんなに変わらないと思うけど…。
そんな疑問が顔にでてたのか、神崎はくすくすと笑って説明してくれた。
「普通、僕を見たら可愛いとか、女の子みたいとか言うんです。けど、北澤さんはそういうこと言わないで気を使ってくれたんです」
思ったこと口に出しちゃうのね、みんな。
でもそんなことあったかなぁ。
「それで、僕聞いちゃったんです。男性みたいに扱われて嫌じゃないですかって」
うわぁ、直球できたね。
記憶にないけど当時すごいダメージだったと思うよ。
覚えてないけど。
「そしたら、辛い時もあるけど、みんなに好かれてる証拠だからって」
「僕はそんなプラスに考えられなかったから、すごくかっこよく見えたんです」
んー。
だめだ、まっったく覚えがない。
言ったかなぁ?
……………ん?
あれ、でもいまの話だと。
「でも、それってかっこいいだよね、可愛いって言うのは?」
さっきの神崎の言葉と合わないぞ。


