そして、手を引かれてたどり着いたのは、ぬいぐるみがたくさん置かれたショップ。





「……え、と」





なんだろう。




可愛い。





え、連れてくる場所可愛いんですけど。



「北澤さん、見てください!」




そう言って神崎は私に向かって猫のぬいぐるみを見せた。




「かわいい…」



「ですよね!」





それを持ってる神崎も含めて可愛い。




まって、私の思考やばい。



そめられてる!








なんだか可愛さに負けてしまいそうなので、とりあえず神崎から目をそらすと。




特大サイズのカメのぬいぐるみがちょこんとテーブルに乗っていた。





そのカメと目があってしまう。




まぁぬいぐるみなんだけど。







目が……買ってって言ってる。




気がする。






かわいい。




あれ、私今日めっちゃ可愛いばっかり言ってる。





そりゃ可愛いものは好きだけど…。




ダメだ、しっかりしろ私。




自分を叱咤しつつ歩き出して。





カメに近付いてそっと抱き上げる。



「あ、ふわふわ」




手触りがふわふわしていて、柔らかい。




反射的に、ぎゅ、と抱きしめてしまう。




なんとも言えない心地よさがあって、口元が緩む。




「ま、いっか…」





しっかりしようと思ってたのに、もうなんかどうでもいいや。






「北澤さん」




後ろから名前を呼ばれて、カメを抱きしめたまま振り向くと。





「んむ!」




顔にフワフワとしたものがくっついて来た。




そしてそれが離れると、何なのかわかった。





青い背中にはまだらに白いつぶ模様があり、半開きの大きな口が少しマヌケで愛嬌があった。





そして、それの隣には楽しそうな神崎の顔が。





「えへへっ、いいでしょう。ジンベエザメさんです」




神崎は、手にしたジンベエザメのヒレをパタパタと揺らしながら私に笑いかける。




「……カメ」




神崎が可愛らしくて、少しだけトキメキそうになる顔を、カメのぬいぐるみで隠した。






「わぁ!そのカメさん大きいですね!」




意外にもカメに食いついてきた神崎。




ジンベエザメを脇に挟んで、カメの頭をふにふにと撫でた。





「わ、すっごいふわふわ!」




嬉しそうにニコニコしている神崎は、ふわふわなものが好きなのだろうか。






「…神崎は、ぬいぐるみ好きなの?」



ふと気になった疑問をぶつけてみる。






さっきから幸せそうだし、そうなのかな?





私の質問に、神崎は一瞬キョトンとしてから、ふふふと微笑んだ。




「好きですよ。僕、こんな見た目なんで、よくプレゼントしてもらうんです。最初はちょっと複雑だったんですけど、集まっていくうちに可愛く見えてきて」





こてん、と首を傾げつつ話す神崎は、ジンベエザメをカメの頭に乗せた。






「でも、今日ここに来たのは、北澤さんがこういうの好きかなって思ったからですよ」




「私?」




なんでだろう。



この見た目からして、あんまり好きそうじゃないと思うし、知り合って間もないのに。






そう不思議に思っていると。





「それ」



と言いつつ神崎は私の鞄を指さした。





私のバッグには、うさぎと犬の小さいマスコットが付けられている。






なるほど、これを見て好きってわかったのか。





と、1人で納得していると。



ジンベエザメがカメの上から消えて。