その人は、神崎だった。
「えーっと、神崎……大丈夫?」
ぶつけた頭をひたすらにさする真希の頭を撫でつつ声をかける。
と。
「…っ北澤さん!!」
「は、はい!?」
驚くほどの大きな声で名前を呼ばれたので、返事の声が裏返った。
じっと、私を見つめる神崎の目にはぶつけた痛みか何か、涙が浮かんでいた。
「やっぱり納得できません!!」
「え、えぇ?」
我ながら情けない声を出すと、神崎は私の肩をがしっとつかんだ。
「北澤さん」
「………はい」
なんだろう。
なんなんだろうこの状況。
カツアゲされる人の状況と少し似てるわ。
相手泣いてるけど。
「…好きです」
「………はい」
知ってます。
と、神崎がふぅと息をはいた。
…あ、え?
…………なに、どういう状況なのこれ。
「……だから、僕のこと何も知らないなら、これから知ってください。僕も北澤さんのこと知りたいです」
だから。
と、そこで言葉をきって下を向くと。
深呼吸してから神崎は顔を上げた。
「…僕、諦めたくないです。返事は、僕を知ってからして欲しいです」
真っ直ぐに告げられた言葉に、顔が赤くなるのがわかる。
……あ、れぇ?
神崎ってこんなにハッキリいう人だったっけ。
あれ?
もうなんか、わかんない。
「えーっと…………あー…じゃあ、とりあえずお友達からってことで……?」
と、視線を神崎から逸らしつつ言うと。
「っ!はい!!」
すごく嬉しそうな声が聞こえて、横目で見ると。
神崎が幸せそうな顔で微笑んでいた。
………………あれ、なんだろう。
心臓、ぎゅってなった。
なんだろ、これ。
…………でも、なんか。
私は、収まらない胸の痛みに戸惑いながらも、それが嫌だとは思わなくて。
そんな自分にとても困惑した。


