まだぼやけた思考の中でそう確信すると、恐る恐る顔をあげてみた。
「………っ!?」
目の前にいる人に私は息をのんだ!
私の机を挟んですぐそこにいる人は、空いている窓を背にして前の人の椅子に座っていた。
長い足を組んで、膝の上で何やらノートを広げてペンをさらさらと滑らせている…!
長い睫毛に、長い指。
少し日に焼けた肌。
おしゃれな髪型の黒髪。
そして凛々しい横顔。
そのひとつひとつが宝石のようにキラキラして見えるのは、こんなにも近くで彼を見たことがないからだ……!
うすく開いた口から私は、思わずその人の名前を呼んでいた。
「……山崎…く…。」
今にも消え入りそうな声は、普段は誰にも届かないと思う。
でも、この時は違ったみたい。
山崎くんは瞬きをひとつすると、ノートから視線を外してゆっくりとこっちを見た!!
「―――っ!!」
ガタッ!
彼も私が起きていることに驚いたのか、綺麗な姿勢を崩すと椅子ごと私から距離をとるように少し後ろにたじろいだっ!!
その行動に私も目を丸くしていると、彼がさっきまで視線を落としていた“ある物”に気がつく!
このノートって、
まさか日誌……??
そういえば私、日誌を書くために残っていたけれど、肝心の日誌が無いし…。
と、まじまじと山崎くんの膝に乗っかっているノートを見ていると…!
ガタンッ!!
急に山崎くんが席を立ち、その場から立ち去ろうとする!!