なんかいろいろ卑怯だっ!

3時間目が始まる頃になって、瑠歌は帰って来た。授業も普通に受けていたのでもう大丈夫らしい。
昼休み、いつも通り瑠歌と机をくっつける。貴島も自然に机を連れてきた。


「貴島ー!俺もいいかー?」


「いいんじゃないかな」


ベルナルドも椅子を連れてきて、貴島の机に弁当を置く。
わー女子が凄い目で見てるー。


「ベルナルドはどうしてここに?」


「実は女子の間でトラブルが起きたらしく……それの原因が俺だからしばらく女子に近づくなって先生に言われたのさ……」


ベルナルドがため息をついた。


「早霜さんと錦柑子さんいるけど……」


「二人ともトラブル起こしそうに無いからいいだろう」


ベルナルドが弁当のふたを開ける。中にはおしゃれなイタリア料理が入っていた。


「うわーおかず交換してくれ」


「いいけど……何と交換するんだ」


瑠歌がカバンからコンビニの袋を出す。袋に入っていたのは、うどんだった。


「麺一本とそのトマト交換しよう」


何故か瑠歌は秘密組織の取引のように真剣な顔になる。ベルナルドはそれに圧され困惑しつつも、ああ、と頷いた。
瑠歌がベルナルドの弁当からトマトを取り、ベルナルドは弁当のトマトが入っていたところにうどんを入れた。不思議な光景だ。


「あれ、貴島は食べないの?」


貴島は漆器の弁当箱を置いたまま蓋さえ開けていない。


「左利きをまだ気にしているのか?大丈夫だ、左手使ったからって何か言ってくる奴はここにはいない」


貴島は左利きだったのか。


「左利き、いいと思うよ。だって私、子供の時左利きに憧れてたし……」


誰かと同じが気にくわなかった頃のこと、いとこのお兄ちゃんが左利きで、いいなーと思っていた。でも、さっきの発言はよく考えたら無神経だったかも……。


「ありがとう……」


私の心配とは裏腹に、貴島はそう言って微笑み、左手で箸を持った。


「大丈夫、私行儀悪いから。みんな私に注目して貴島の事見ないようにするよ」


これは瑠歌なりの優しさだ。


「うわー貴島の弁当おいしそー!うどんと交換……」


「瑠歌、食事中は立ち上がらない」


瑠歌は椅子に座り、貴島の弁当を見る。旅館で食べる料理をそのまま入れたみたいな弁当だ。これとうどん一本を交換はエビで鯛を釣ろうとしすぎだ。