なんかいろいろ卑怯だっ!

「よし、それじゃ役割を決めるぞ」


新しく書くためにテーマの案を消した。私や津端の案も残さず消されていった。
黒板アートやポスター等の役割、その下に人数が書かれる。
私はステージ発表以外なら、適当に余ったのでいいと思った。


「黒板アート、担当させていたたくぜ~」


瑠歌は軽快に名前を書き、黒板から離れていった。
実は、瑠歌は絵を描くのが好きだ。でもめんどくさいから美術部には入らなかった。


「貴島君がステージ発表とかだったら素敵なのに……」


「でも早霜さんのところを選びそう」


「早霜さんが地味なところを選んだら……早霜さんにかかってるよね」


私が聞いていることをわかってて言ってるの?
でも、私はステージ発表には行かない。


「親奈はどこにする?」


「私は教室の装飾作りかな」


「じゃあ僕もそこで」


あっ、どうしよう。ステージ発表行かないんだ。
視線が痛い。いや、視線に負けない!私は強くなったんだ!自分の行きたい方に……。


しかし、ここは礼子ちゃんをいじめた男子がいる。貴島が暴走したら止められる気がしない。でも、ステージ発表は嫌だ!


「貴島はステージ発表が向いている、私は装飾作りが向いている。そういうこと。別行動しよう」


ここまで言って、取り乱されたらどうしようと思った。
何とか貴島だけをステージ発表に行かせたい……!


「どうしたの?僕に何か嫌なところがあった?」


「いや、それぞれ得意なことがあるだけで……」


懐かしい、光の無い真っ黒な目。見つめられることに耐えきれず、目を逸らす。
人差し指の先同士をせわしなくつつき、どうやって乗り越えるか考える。


すると、貴島は私の手を取り、僕を見て手に意識を集中させてと言った。
これはテレビでやっていた……催眠術だ。


「親奈は僕と一緒にいたくなる……親奈は僕と一緒にいたくなる……」


ゆっくり、はっきりと唱え続ける。貴島の声が鼓膜に焼き付きそうだ。


「わかった、わかったから催眠術を使うな!」


そう言うと、貴島は私の手を解放する。ため息をついてから、ステージ発表の下に自分の名前を書いた。