その後、夏休みに貴島と会うことは無かった。
寂しさを宿題にぶつけたら、思いの外早く終わった。そんな私は最終日、瑠歌に泣き付かれた。


六時には何とか終わりそうなところまできた。
私が家に帰った後、瑠歌は、明日一緒に登校出来ないと電話で伝えた。


何か用事があるのかなと思ったけど、疲れていて聞くのも面倒だった。


二学期最初の日、その理由を知る。


学校近くの道を歩いていると、ヘリコプターが飛んでいて、その横では何かがキラキラと光っていた。


ヘリコプターが学校の上空に留まる。すると、パラシュートが開いた。
青い空に白いのが二つ。ふわふわと落下していく。


二つのパラシュートは、並んでいる学校の木にそれぞれ落ちた。


「瑠歌、大丈夫?」


「うん!最高に楽しかったよ!」


うつ伏せで枝に手足を乗せながら答えた。


「服汚れるよ」


「別に良いよ、元から汚れてるし」


木から降りた瑠歌は、制服に付いた葉をバサバサと払う。


「おはよう親奈。ふぅ……間に合ってよかった。たまにはこういう登校も悪くないかもしれないな!」


白いパラシュートと枝の間からもぞもぞと現れる。ベルナルドも、今までの中で一番激しい登校をしていた。


「あっ、水上機も回収しないと!」


「水上機?」


「今ごろプールに着水してるよ。スマホのアプリで操作できるんだよ。お父さんが性能を試してほしいからって、貸してくれたんだ。」


ヘリコプターのそばで光っていたのは、瑠歌が言っている水上機だったのかもしれない。瑠歌は何かを操作するのが好きだね……。


「ヘリコプターの中でも操作出来るとはな……パラシュートとしばらく一緒に飛んだ後、予定通りプールに向かっていった。技術の進歩を感じたよ」


「予約機能もあってね~指示しておけば本当にしっかり動いてくれるよ!」


瑠歌とベルナルドは気に入ったらしい。二人で楽しそうにプールの方へ向かって走る。


「なるほど、一緒に登校出来ないっていうのはこれか……」


おかしいけど、学校が始まったなと実感する。
瑠歌は泳げないから、落ちないよう気を付けてね。


教室に入って、あれの良さを語る瑠歌を想像する。クスッと笑った私は、瑠歌を教室で待つために歩いた。