なんかいろいろ卑怯だっ!

「ここにしよう」


お祭りがあるというのに人の気配がないところだ。階段があって、公園に続いている。


定期的に掃除されていて、草がぼうぼうになっていない。
ベンチに座り、袋からパックを取り出す。


開けると、ソースと鰹節の香りが広がった。


「いただきます」


お好み焼きに箸を入れる。ふかふかで、食べる前から美味しいことがわかる。
シャキシャキのキャベツとプリプリのえびの食感で、お好み焼きにして良かったと思った。


お好み焼きはお腹もいっぱいになるし、お祭りの時はこれだよね。
食べながらお好み焼きを絶賛していたら、青海苔の香りで思い出した。


青海苔、歯についたらどうしよう。
鏡も持ってきていない。


仕方ない、今から貴島に顔を見られないようにしよう。
と、思ったのに貴島が見てくる。


「どうしたの?」


ふいっと顔を逸らした。


「美味しそうに食べる親奈が可愛くて……僕もこれにしてよかったなと思ってた」


今、貴島はどんな表情?本当にそう思ってくれてる?
顔が見れないと、言葉を素直に受け止められなくなる。怖い。


幻滅されたくない。けど、表情から読み取れないのも怖い。
不安になるけど、貴島と一緒に楽しめるときは本当に幸せ。


食べ終えると、二人で町を見下ろしていた。


「貴島の家って私と反対の方向だよね?見える?」


「うーん……あっ!見えたよ!」


「どこ!?」


貴島が指差す方に、大きな家があった。


「私の家から結構離れてる……それなのに、いつも送ってくれたんだ……」


「親奈を一人にするのが心配なんだ。近道も知っているから、気にしないで」


もしかして今日も送ってくれるつもりなのかな?なら、早めに帰らないといけない。


薄暗くなった公園で、七日にここで待ち合わせしようと約束した。


「もうすぐ六時だね」


貴島が公園の時計を見て言った。そろそろ帰らないと。帰るって言わないと……!



言えない。
すると貴島の方から、もうそろそろ帰ろうかと言った。


急に寂しくなって焦った私は、貴島の服の裾を掴んだ。


「まだ帰りたくない……」


こんなわがままなことを言ったら嫌われる。けど、我慢できなかった。
言うだけならいいよね?そして貴島は心配して、もう暗いから帰ろうと言ってくれるはず。