射的、の大きな文字が見えた。小学生の兄弟とそのお母さんがいた。
椅子に座って店のおじさんが様子を見ている。


「お先にどうぞ」


「あ……」


ここでレディーファーストか!
しまった。それは考えてなかった。


貴島のを見たいから後で、とは言えなかった。譲ってくれたんだしな……。よし、自分の力で挑戦しよう。


おじさんにお金を渡し、銃とコルクを貰う。
コルクを詰め、よく狙う。私が欲しいのはあの箱に入ったネックレスだ。
透明な箱の中に、紫色の細かなビーズが輝くネックレスが入っている。


よし、当たって!景品に真っ直ぐ飛んでいくのをイメージして撃った。


結果は、真上を通過していった。
でもこれで位置が掴めた気がする。次は下だ。


その後二回挑戦したけど、景品はずれるだけだった。


「回数切れか……」


そう呟いて銃を置いた。まあ、祭りなんてそういうものだ。
私は縁が無かったんだと思って諦めた。


次は貴島の番だ。何を狙うのかな?
ゲーム機やソフト、流行っているキャラクターのぬいぐるみ等が並んでいる。予想がつかない。


貴島はアニメのグッズを見ていた。貴島、実はアニメ好きなのかな?
その横は私が狙っていたネックレスだ。見るとまた欲しくなってくる……。


何も考えずに屈んでいた私とは違い、台に乗り出すと肩で銃を固定し頬を沿わせるようにしていた。


真剣な横顔を見つめていると、スッと通った鼻、鋭い光が差して遠くまで射抜くような黒目、とドキドキさせる部分が目について仕方ない。


見惚れていると貴島が撃った。


私のときよりも力強く飛んだ気がするのは気のせいかな?
ネックレスの箱がぐらぐらと動く。その後パタンと倒れた。


「おめでとう」


貴島は当てたのに、なんてことないみたいにさらりと銃を置き、箱を受け取る。まさか……。


「親奈。これは君の物だ」


「えっ、あっありがとう……!でも、いいの!?」


「うん、この夏祭りの記念にね。喜んでもらえて嬉しいよ」


この綺麗なネックレスは、貴島が取ってくれたということで特別な物になった。
貴島、ありがとう。いつも貴島に何かしてもらってばかりだから、いつかお礼がしたい。


ローズクォーツも、ありがとう。
このネックレスもあなたも大事にするよ。


空を見ると、青が濃く、黒くなっていく。
待って、まだ帰りたくない!貴島と一緒にいたい!


時間はローズクォーツの力でも止められない。
まだ時間はある。けど、あっという間だ。