なんかいろいろ卑怯だっ!

校歌の後に校長先生は、台風の被害がどうとか、事故に気を付けろとか、予想できていたことを話し始める。


夏休みの過ごし方で人生が変わる。勉強に励み、親の手伝いもして、健全に遊んでください。我が校の生徒は有意義な夏休みを遅れると信じています。


ゆっくり話すからイライラしてきた。
さっさと終われ!


最後の方は暑さで、追われ終われと念じ続けることしか出来なかった。やっと終わったと思ったら表彰式がある。


パチパチ拍手して、後何人か数える。
ごめんね。ステージのあなたたちにとっては大事なことなのかもしれないけど、こっちは暑さで死にそうなんだ!


その後、教頭先生のどうでもいい話で式は終わった。


これで教室に帰ることが出来ると思ってはいけない。
夏の総体に向けての壮行会がある。


そのために私たち一般生徒は場所を移動する。運動部のためのスペースを作る。
十分休みの間、瑠歌と雑談していた。チャイムが鳴って、さささと元の場所に戻る。


吹奏楽部が演奏する中、部活の時の服に着替えて入場する。
モテる先輩が入場すると騒いでいたけど、貴島の方が格好いい。この中の全員を見ても、貴島の方が輝いていると思った。


青春している運動部の中に、しれっと入り込む異質な存在があった。


「黒き英雄の凱旋……クククッ……待ちわびていたぞ!」


中二病は黒いマントを翻し、手を右に突き出す。
その後ろに続くのは、薄い水色のウィッグをつけ、キラキラしたアクセサリーをつける男子。一番後ろはフードつきのマントを被り、蝋燭を持っていた。


「何あれ?」


「何の部活?」


「そもそも運動部なのか?」


異質な存在はもちろん騒ぎになる。
気付いた先生は戻りなさいと声を上げる。しかしそのまま運動部の列に並んだ。横に並ばれた女子バレー部可哀想。ドン引きしている。


先生は腕を引っ張り、戻そうとする。しかし頑なに離れなかった。
蝋燭は消火して燭台ごと取り上げられる。取り戻そうと手を伸ばしたところ、捕まって連行される。
残りの二人はしぶとかった。


決意表明する場所まで走り、元祖中二病はマイクスタンドを掴む。


「真黒の騎士団(しんこくのきしだん)は、文化部でも運動部でもない!」


その名前は部や同好会ですら無い。


「何者にも縛られない、選ばれし者の星団だ!」


ここでマイクを渡す。


「我々は一週間後行われる、戦女神の祭壇に出陣する。鮮やかに、清く、美しく戦おう。アディオス……」


最後に、ピンで胸元にとめていた手紙を投げ、連れていかれた。
戦女神の祭壇ってゲームのイベントじゃん、という声が聞こえた。