階段を上ったら、楽園が待っている。重い足を引きずって、教室のドアに手をかける。


ひんやりした風が私を出迎えてくれた。


クーラーが効いている教室で、冷たい机に伏せる。


「涼しい……」


「親奈、おはよう」


扇子の柔らかい風が私の頭に当たる。貴島が扇いでくれていた。紺色の扇子だ。


「おはよう。明日から夏休みだね~貴島はどこか行くの?」


「うん。今年は軽井沢の別荘でゆっくり過ごすよ」


そうか……じゃあ夏祭り来れないか……。
いつから軽井沢に行くんだろう?その前に何か出来ないかな?


「いつから?」


「七月の二十八日から八月六日まで。お父さんの仕事の関係で今年は少し短いんだ」


二十七日が夏祭りだからギリギリ行けるかも!やった!
でも、ここで誘うと他の子に知られてしまう。
夏祭りで妨害されるとめんどくさいので、帰りにちょこっと……。