明日から夏休みか。
貴島とどこかに遊びに行きたいな。もしかしたら貴島の方から誘ってくれるかも。


凄い所に連れていこうとしたらどうしよう……。流石に中学生だしそれは無いか。
いや、でも貴島ならありえる。持ってる船でどこか遠くに行こうとか……。


そんなことになったら心臓がもたないけど。
近所の神社の夏祭りは貴島と行きたいな。瑠歌はいつも一緒だし、ベルナルドは……ナンパしそうだしなあ。


夏休みの予定がぼんやりとだけど見えてきた。
来年は受験で苦しくなるから、今のうちに楽しもう!


一週間で命の火が尽きる蝉のように、夏休みを楽しまなければいけないという思いに駈られる。
蝉の鳴き声はまだまだ序盤。夏休みの始まりを告げ、心に余裕を持たせる音だ。


暑いけど、爽やかな風も吹く。空は青く澄んでいて、心が綺麗だった頃を思い出す。


そんな風景にぴったりの人が……。


「おはよう」


麦わら帽子に、水泳の授業で焼けた肌。そして虫取り網を持ち、ゼリーだけが入った虫かごをぶらさげていた。


「瑠歌、夏休みを先取ってるね。虫捕まえるの?」


「捕まえないよ。虫は見た目が好きじゃないんだよな~」


ゴキブリとは果敢に戦っていたのに。虫以上におぞましいホラー映画を見ていたのに。
それとこれとは別というやつか。


「夏休みだね~。登校芸もしばらくお休みか。まあ夏休みは楽しいからいいけどね」


「夏休みも遊ぶし、関係ないよね」


瑠歌は休みの日ももちろん暴走する。だから、登校芸が見れないのは少し寂しいな……とは思わなかった。