「中二病、部活つくるんだってさ」


理科室から出た後、瑠歌は中二病と一緒に職員室に行っていた。落とし物を届けに行った。中二病が鍵を返した後、廊下を降りる時に言ったらしい。


「同じ趣味の人が集まれば上手くいきそうだね。何部をつくるの?」


「黒魔術研究部」


「安定の中二病だね」


でも安心した。私よりも合う友達が出来ることを祈ろう。


「じゃ、行こっか」


靴を履き替え、待ってくれていた貴島の所に行く。


「今日は……助けてくれてありがとう」


まだ機嫌が悪い貴島を見上げて言った。
言うことを聞かなかった私に怒るかな?何も言ってくれなかったら……。


貴島の反応が気になってドキドキする。


「行こう。ここで立ち止まったら他の人が通れなくなる」


やっぱり怒ってる。
校舎から出た私たちは黙って歩く。この空気に我慢出来なくなったのか、瑠歌が口を開いた。


「もう機嫌直しなよー!せっかく親奈と帰ってるのにもったいないって」


瑠歌がそう言ったけど、振り返ることも無く前を歩き続ける。


「そーゆーのカッコ悪いって。ああもう、意外と頑固だね~」


瑠歌は自分のことじゃないのにやきもきしていた。
今日はずっとこんな感じか……。私のせいだ。私が連れて行かれたばかりにこんな思いさせて、悪いなぁと思うけどどうすればいいのかわからない。


手を何度も組み直して、次に言う言葉を探す。すると……。


「えっ?」


パシッと、私の手を掴んだ。そして、指を絡める。


いつも余裕がある貴島が、顔を真っ赤にして手を繋いでいる。
珍しいな……。でも理科室に拘束されて貴島と一緒にいられなかった分、こんな風に近づいてくれることが嬉しい。


空いてる右手で口を隠している。
その様子なら、私は何も言わなくていいか。


黙ってゆっくりと歩いていた。瑠歌は空気を読んで、静かに去っていた。