なんかいろいろ卑怯だっ!

ミョウバンはどんどん大きくなって、赤く染められる。


「いいぞ……」


吊り上げられたミョウバンを見て、満足そうに呟く。
今度は筆を持って、パレットに浸す。丁寧に塗った後、呪文を唱える。


「古の龍よ、我が作りし石に力を宿せ……!」


ミョウバンに手をかざし、目を閉じる。
私は渡されていた魔導書の一部(台本)を読んだ。


「星使いの名の元に命ず、黒き光よ、世界を、我らを照らせ」


棒読みになってしまった。まあ仕方ない。私は中二病じゃないから。


「よし。月は太陽の光を必要とする……この石もそうだ。聖と邪を取り入れ、バランスを保つことで偉大な力を手にいれるのだ……」


ミョウバンを手に乗せ、窓辺に移動する。カーテンを勢いよく開けると、真っ暗だった部屋に光が差し込む。目が暗いところに慣れていたせいで、久しぶりの光が目に刺さる。


「まぶしっ」


「闇に慣れた我らは苦手とするものだな……。だが、出来たぞ!」


ゆっくりと目を開けると、色が濃いのに透明感を失っていないミョウバンがあった。絵の具でここまで綺麗に塗れるものなんだ……。


「綺麗……」


「だろう?賢者の石はこの光で数多の人間たちを魅了してきたのだ……」


すぐに揃う物で作られたのに、何だか不思議な魅力を感じる。いいものなのかもしれない。でも、不思議な力があるとは信じてない。


「契約したくなったか?」


「ううん」


私は首を横に振った。
中二病はポカンとしている。


石のために、貴島と私の名誉を犠牲にはできない。