礼子ちゃんは、真ん中にいた男子に体当たりした。


「数増やすことしか考えられないんですか!?多数で囲むことしか頭にないからあなたたちはいつまでたっても弱いんです!」


「は?お前よりは強いし!」


「他人と比べないと自分の強さを証明できないと思ってるんですね。可哀想……」

さっきの震えがついてきた声とは反対に、落ち着いて言った。
そう、威勢だけでなんとかできると思っている馬鹿に一発ぶち当てるんだ!


「あなた方はやたらと多勢に無勢を好みますが、ゴミはいくら集まろうがゴミなんです。腐った蜜柑を五個積んだっておいしくはならないでしょう?」


礼子ちゃんは貴島そっくりの据わった目で、首と一緒に重ねた両手を傾けた。
あれ?なんかおかしくない?


「何が言いたいかって?崩してしまえば問題ない!」


そう言って礼子ちゃんは後ろから近づいていた男子の胸を思い切り殴った。


「固まって動くしか能が無い上に、それを崩されることも想定できなかったんですね」


逃げようとした別の男子の膝を蹴った後、髪を引きずる。


「なめんなよ馬鹿女!」


その様子を見たもう一人の男子が、礼子ちゃんの腕を狙って殴ろうとする。助走をつけたから当たったらひとたまりもない!


「遅い!」


礼子ちゃんは上手くかわし、殴りかかろうとした男子の首を横に押して、窓にぶつけようとする。


「やめろそれはアウトだ!」


ベルナルドが礼子ちゃんを止めてくれた。横からいこうとしたけど、ベルナルドがガードする。


「逃げられると思うなよ」


貴島はナイフを首めがけて投げる。運よくその男子が転んだので命中しなかった。


「あーっひっひっひっぎゃちゅひふぉふぇああ!」


瑠歌は奇声をあげながら、私たちを捕まえていた男子たちを追いかける。
さて、私は貴島を何とかしないと。流血沙汰にはならない分瑠歌は後回しだ。


この騒ぎを見に生徒が集まったせいで先生は来るのが遅れた。そして、私たちは滅茶苦茶怒られることになる。


しかし、瑠歌と同じくらい私とベルナルドが怒られたのは納得いかない。