三重さんの事が気になって授業に集中出来ないまま昼休みが来た。3時間目と4時間目のノートはぐちゃぐちゃでよく分からない。だれに見せてもらおう……。


悩みが多すぎて食欲が湧かない。ため息をついて箸を持った。


「何か、困っていることがあるのかな?」


見上げると、貴島がいた。貴島のせいで悩んでるんだけど、心配してくれてるのは嬉しかった。


「大丈夫です」


「そうか……では引き続き僕の言葉を聞いてくれるかな? 隣の席の君と親睦を深めたいと思っていてね、よければ一緒にお弁当を食べないか?」


貴島は何故か顔を少し赤くして言った。実は今日、友達が学校に来ていないので一人で食べていた。いつもだったらぼっちとか言われていたけど、貴島は他の人とは違った。


「いいの?」


「うん」


いつもの私なら断っていただろう。でも、貴島は勇気を出して誘ってくれたのかなあと思うと断れなかった。

私が貴島の席に向かうと、貴島の席にはすでに他の女子が何人かいた。その子たちは目の前にやってきた私を特に気にする様子もなく見ていて、貴島が戻ってきたらそっちに意識が移った。


普段経験しない大人数でのお弁当だけど、私は私のペースで黙々と食べる。
昼休み中、貴島は次々と続く女子の話をずっと聞いていて、お弁当を全部食べられていないようだった。


授業中、隣でぐうぅーとお腹の音が聞こえた。私じゃない。


「誰だよ授業中に。まあどうせ早霜だろうけど」


蛇打がそう言ったが、貴島説を唱える者が出てき始めた。主に男子だ。


そう来たら迷うまでもない。


「うんごめん。私です」


貴島が言おうとしたのを遮って言う。クラス中が爆笑した。いつも通り苦笑いして頭をかく。
貴島がそれを否定しようと口を開いたけど、私は人差し指を口の前でばってんにした。


「こいつもうお腹ぐーって呼ぼうぜ」


蛇打が新たなあだ名を考え、私を指差して周囲を見回す。よし、いつも通りだ。あのまま私が言わなければ、貴島は貴島に嫉妬している男子にからかわれていただろう。
せっかく女子に好かれてスクールカースト上位にいれそうなんだから、こんなことで評価に傷付くのはもったいない。


「もうお前らいい加減にしろー! 人間なんだからそういうこともあるだろうし、そんなこと言ってるとモテねーぞ!」


当坂先生が腕をぶんぶん払いながら言うと、またみんなが笑った。
貴島の方を見ると、なんか嫌そうな顔をしていた。余計なことをしただろうか?


でもこれで貴島に嫌われたら平和になるかもしれない。悩み事が一つ解決したが、それでも胸につっかえが残った。なにが嫌なのかは自分でもよく分からない。


そして、帰りの会の後三重さんに呼び出された。