なんかいろいろ卑怯だっ!

「瑠歌、リコーダー吹きながら踊るのはやめて!」


やっぱり瑠歌はこういうことをする。口だけで吹いているので弱弱しい音しか出ない。空いた手を必死に振り、スキップするたびリコーダーが落ちそうになったり……見ていられなかった。
私はリコーダーを奪い、まだ踊ろうとする瑠歌の手を掴む。


「瑠歌!もうやめなさい!」


一応踊るのをやめ、話を聞いてくれるようだ。


「あっリコーダー取ってくれてありがとう。正直つまんないと思ってた」


「何でやめなかったの?」


「……引っ込みがつかなくなって」


ひきつった笑顔で言った。瑠歌は引っ込みがつかなくなって奇行を続けてしまうことがよくある。

今度授業でチームを組んでリコーダーの発表をするので各自で練習……ということだったけど、練習は進まない。私もリコーダーは苦手だから家で練習することになるかもと思っていた。


「練習から逃げるんじゃない!」


女子に絡まれていた貴島が戻ってきた。瑠歌は肩を窄める。


「残り五分だし練習しよう。苦手なら練習してちょっとでも良くするしかないよ」


「はい。でも、兄貴が上手いからいざとなれば吹いてるふりだけでいいし、緊張はしないね」


こいつ、反省してない。
瑠歌の肩をはたき、遅めの練習が始まった。