四時間目、貴島と瑠歌と一緒に移動する。次は音楽なのでリコーダーも当然持っている。


「おい何ぶつかってんだよ!」


「ごめんなさい!ごめんなさい!」


聞き覚えのある声だった。小柄な女の子が、今にも泣きそうな声で何度も謝っている。


「えーいさっさと散れーい!」


瑠歌がリコーダーで男子の背中を叩く。


「僕の妹に何をしているのかな?」


貴島がデザインナイフを取り出し、カバーを外す。貴島の真っ暗な目とは反対に刃はキラリと光った。
さすがに男子も逃げていく。貴島は追いかけようとしたけど瑠歌に止められた。


「礼子ちゃん、何があったのか話せる?」


「さっきあの人にぶつかってしまって……背も高かったし、睨まれたし……怖くて……」


やっぱり、先生に言った方がいいよね。何もしなかったら悪化するだけだ。


「礼子ちゃんはやり返さないの?ちょっとくらいだったら別にいいと思うけど……」


「礼子はそんなことが出来る子じゃない。だから僕たちが敵を排除しなければいけないんだ……!」


貴島が変な方向に進んでいる。駄目だ貴島!逮捕されて会えなくなるなんて悲しすぎるぞ!


「やり返す……ですか……。やっぱりお兄ちゃんたちに迷惑はかけたくない。大丈夫、心配しないで!私、自分で何とかしますから!」


そう言って、礼子ちゃんは走り去る。
自分一人で抱え込まないで。そう伝えることが出来なかった……