それから、嫌なことを耐えきり放課後を迎える。瑠歌がいつもの四人で帰ろうと言った。でも、貴島とベルナルドは違う方向だし、今貴島と帰るのは火薬庫を爆破するようなものだ。


「僕が守る。それでも嫌かな?」


そんなことを言われると、帰りたくないなんて言えない。
妙な安心感もあって、そのまま一緒に歩き出す。


「見ろよあれ、一緒に帰っとるぞ!」


「うわーいいなー!」


やっぱりこうなるよね。でもこれくらいは覚悟していた。


「何あれ自慢してんの?」


「彼氏と帰るってどんな気持ちですか~?」


リュックサックの肩ひもをぎゅっと握りしめ、素通りする。何故かあいつは私をネタにしてくる。
何で見ず知らずの人間にそんなこと聞かれなくちゃいけないんだ。


「無視すんなよ!早霜のくせに!」


こっちに来た!私の背後にまわり、突き飛ばそうとした……けど。



「相手にされなかったからと逆切れして突き飛ばすなんて、男の風上にも置けないなあ」


空気が凍ったかのように冷たくなる。見ると、突き飛ばそうとした男子の腕を力強く掴んでいた。


「嫉妬して人を貶めることしか考えない、卑しい奴らは消えてくれ。見ていて不快なんだ」


これは、特に女子に大ダメージを与えた。心当たりがあったのか泣きだす子もいた。
三重さんはショックで立ちつくしているようだった。


「おい、もうその位にしろ」


ベルナルドが止めなければもっと言うつもりだったらしい。ここからが本番なのにと言っていた。


「見ろ、人が立ち枯れた木のようだ」


瑠歌の言う通り、皆何も言わずに立ちつくしていた。


「木に例えるのはやめろ。木が可哀想だろう」


いつもの貴島じゃない。見えないスイッチが押されてしまったのか。


これは大きな戦争の宣戦布告となってしまうのか、それとも全てを終わらせる言葉となるのか。
ベルナルドに注意され不貞腐れた貴島が私と手をつなごうとする。私は拒むことなく手をそのままにする。


校舎にいる間は寂しかったから、手の温もりが心に沁みる。
くじけそうになる時もあるけど、やっぱり貴島の近くにいたい。