教室に着くと、皆の視線が痛かった。椅子に座った時、自分の机に落書きがされていることに気付いた。


貴島の彼女 キスはもうした? うらやましい~


そして、不細工に描かれた私の顔。
絵は蛇打が描いたに違いない。他は女子の誰かの字だと思う。


嫌だな。ほっといてよ。


朝の会の間、消しゴムでゴシゴシと消した。先生に言ったって変わらない。また別のことを書くか、また別の人が書くだけだ。
私の噂も聞こえる。精神が削られていく。



ここから逃げたいな。でも、貴島たちと会えないのは嫌だな。
話しかけられないように教科書を用意したり、用も無いのに机の中を整理する。それでも話しかけられ、質問されたりからかわれる。


「もうやめろ。そんなことを聞いてどうするんだ」


「気になっただけだよ」


「何で怒ってるの~?」


貴島が来ると誤魔化す。そして、貴島を離れたところに連れて行き、別の子たちが私の悪口を聞こえるように言う。卑怯とか、男好きとか、媚びているとか……早霜さんのくせにとか……。
私にだけ聞こえるようにするなんて、悪口言うために無駄な力を使いすぎ。


頬杖をつき、気にしていないふりをしてやり過ごした。