薄暗い場所の木に隠れ、息をひそめる。
どうして私は平穏に生きられないんだろう。からかわれたり、下に見られたり。


きっと、あの子たちは私を出し抜こうとしているんだ。
あんな子が貴島と付き合うなんてありえない、私の方が良いに決まってると思ってるんだ。


足音が近づいてきた。見つかると思い、静かに移動しようとする。しかし、ガサッと音を立ててしまった。
見つかる!誰だろう、友達も呼ぶのかな?
手が震え、目を固く閉じる。


「早霜さん!」


貴島の声だった。安心して、力が抜ける。


「学校に着いたら、早霜さんを探している人がいて驚いたよ。どうしたんだい?」


理由は言えない。質問攻めに会って逃げたなんて。


「ちょっちょっと瑠歌たちが騒いでいたから……それで私も何かすると思われたっぽい?」


少しぎこちなくなってしまった。
貴島は怪しいと思ったらしい。表情でわかった。けど、深く聞いたりはしなかった。


「そうか。涼しげでいいけどここは虫が多そうだ。綺麗な肌を荒らされてしまう」


「綺麗なって……他の子に言う言葉だよ!」


付き合いたてだからお世辞を言ってるの!?あり得ないとわかっててもドキドキして、少し嬉しくなった。


「教室に行こう。遅刻してしまうよ」


私に手を差し伸べる。私は立ち上がって、教室に向かった。