なんかいろいろ卑怯だっ!

礼子ちゃんが協力してくれるおかげで、少しの間だけ会えるようになった。


ベルナルドが見つけた、物置状態の教室。合鍵を作って休み時間に入る。
秘密基地みたいでドキドキした。


カーテンを閉め、ひそひそと話す。


「貴島の夢は何?」


「夢か……やっぱり、跡を継ぐことかな。でも、お父さんみたいに何もかもを一人でやるのは嫌なんだ。ある分野では、僕より合っている人がいる」


貴島は瑠歌を見ていた。
そうか、確かに瑠歌の発想とか怖いもの知らずなところは役に立ちそうだ。
今でも商品開発に関わるくらいだし。


「親奈は何かある?」


「私は……考えたことがなかった。強いて言うなら、自立した大人かな」


ここに残り、普通に働いて生活できたらいいなと思っていた。
結婚はできる気がしなかったし。


「今は兄貴のお嫁さんという選択肢があるよねぇ」


瑠歌はそう言い、歯を見せて笑う。


「ちょっ……そうなったとして、結婚するまでの間どうするのって話!第一、進路希望調査票に書けないじゃん!」


皆が笑い、この話題は過ぎ去った。
もうそろそろ教室に戻らないといけない。


「それではまた、三日後に」


「うん。またね、貴島」


教室を出るタイミングもバラバラにする。そして、使う階段も。


毎日入れ替えたり、音声を改竄するのは難しいから、会えるのは三、四日に一回だ。


礼子ちゃんは、嘘の音声が入った盗聴機を持って悲しそうにしていた。
自由って言ったのは私なのに、毎日自信を持って貴島に会えない。


このままで良いのかな?
ずっとは続かない気がするんだ。