文化祭の次の日、ゴロゴロしていた土曜日。
お母さんが、貴島さんから電話がきたわよと言った。


こんな日にどうしたんだろう。
不思議に思いながら受話器を受け取った。


「はいもしもし」


「もしもし、早霜さん。今日何かご予定はありますか?」


「ありませんが……」


貴島のところの執事さんだ。
何で執事さんが……。


「灯夜様のお父様が重要な話をしたいと……今から車で迎えに行きます」


「あっはい」


よくわからないまま、取り合えず受話器を戻した。
用事は無いけど今からか……。着替えなきゃ!
貴島のお父さんに会うかもしれないんだ。変な格好は見せられない。


大事な時のために温存していたワンピースを着る。
髪をとき、リップクリームを塗る。


そして、自分の気持ちを落ち着けるためにローズクォーツのネックレスをつけた。


今日はこっちの方がいい気がする。


静かな住宅街に不釣り合いな高級車が止まる。
心配そうに見る執事さんがドアを開ける。何でそんな顔をするの?
大事な話って、良い内容じゃないの?


車内は余裕があって、それが逆に私を不安にさせた。