黒胡椒もお砂糖も



 もう喋る気力も残ってない。だからすみませんもありがとうございますも言ってやらない。

「会社どこでしたっけ?」

 高田さんが出口に車を動かし、助手席の平林さんはカーナビを操作することになっているらしい。私はぐったりと座席に持たれながら、出入りしている会社のビル名を彼に伝えた。

「よし、出発~!」

 陽気な平林さんと沈黙の高田さんと疲れきった私を乗せて、車は吹雪きの都会の中へ出て行く。

 もう勝手にして。私は喋らないからね!そんな心境だった。

 音楽もかけない車内で、陽気な平林さんは一人、お客さんの面白い話や上司の話を誰ともなく話している。都会には珍しい吹雪の中、平然とステアリングを握る高田さんは時々頷くのみでその相手をしていた。

 ・・・いつでもこんなんなのだろうなあ~・・・。

 後ろの席で沈み込みながら、ぼーっと私は考える。楽しそうに喋る平林、黙って聞き、時々頷く高田。

 ミスター陽気に何を聞かれても、小声であーとかうーとか言っていたら、漸く彼も私に話しかけるのを諦めてくれたようだった。

 やれやれ。疲れて私はため息をついた。

 もう送ってくれるってだけの事実を有難く受け入れよう。そして今日の出来事は忘れることにしよう。このことが万が一にでも第1営業部の皆に知られたら大変――――――

 一人でそう思っていた私の耳に、話し続ける平林さんの声が入ってくる。

 本当によく喋るね、この人・・・。

 バックミュージックよろしく窓の外を眺めながらそれを聞いていた。