「遠慮はなしですよ。この雪じゃあ仕事にならねえって、クロージングのアポもないし、今から飲みにいくつもりだったんです、俺達。だから暇。車で送りますよ、雪も酷いし」
平林さんが機嫌よくまるで歌うようにそう言うのと、高田さんが腕を伸ばして駐車場のあるB2のボタンを押したのがほぼ同時だった。
ナイスコンビネーション!これが阿吽の呼吸ってやつか!などと呆然と考える私を、エレベーターはいとも簡単に連れ去る。
「本当に結構ですから!電車で、確実に、行きたいんです!どうぞお二人は飲みにでも遊びにでも行って――――――」
私の必死の叫びは平林さんの軽やかな笑い声で遮られる。そして1階について開いた扉は、高田さんの指であっさりと閉じられてしまった。
うぎゃああああ~・・・。閉じるエレベーターのドアを切なく見詰める私。
「さあさあ、尾崎さん、急がないとお客さんを待たせますよ。あ、重そうですね、俺持ちます」
「いいいいいいえ!大丈夫ですから!」
「まあそう言わずに」
「大丈夫ですからあああ~!!」
あっという間に私から鞄を奪い取って、うちの会社が誇るスーパー営業はさっさか進んで行く。
・・・鞄を人質に取られた~・・・。私はがっくりと肩を落としてとぼとぼと彼等の後について行った。
あの鞄の中には提出しなきゃならない書類の束。そして個人情報の塊。今更やつから奪取できるとは思えない・・・。
「どうぞ」
運転席に高田さん、助手席に平林さんが座った黒いセダンの後ろ座席に、仕方なくコートを押さえて乗り込んだ。



