舌打ちを堪えて、彼のために設計した契約内容を懸命に思い出した。医療の特約にいくらつけていたかは忘れたが、医療はつけていた。それは確かだ。この人、完全な無保険だったから。

「・・・ええと。領収書のところの入院て欄に点数が書いてあれば、出ます」

『領収書?えーとちょっと待って下さい。・・・あ、書いてます~。じゃあ出るんだ、ラッキー』

 ・・・ラッキーじゃねえよ、バカ男。

 私はため息を押し殺して必要事項を聞く。そして廊下で立ったままでそれをメモし、すぐにでも給付金が欲しいという24歳のお子様の為の手続きをすべく電話を切った。

 ああ、他の善良な契約者様は、バカな若造の飲みすぎの為に保険料払ってんじゃないんだけどねえ・・・。くそ、こんな事例は給付金は出ないように出来ないものか!

 自席に戻ってイライラとパソコンを開く。

 なあーにが入院だよ、自業自得じゃねえかよ!口汚く罵りながら書類を作る。すぐにでも欲しいらしいから、書類は今日届けて判子を貰わねば。

 残念ながら、他に優先すべきアポもなかった。

 今日は雪だし、カレンダー配りで一日を終えようと決めていた私の計画は朝一から見事に狂ってしまった。

 ぶちぶち口の中で文句を言いながら、それでも準備を終える。その時、事務所内が騒がしいのに気付いた。

「うひゃあ~!!」

「・・・駄目、外回り、今日は諦める」

 他の営業達の声が次々に聞こえる。

 へ?と思って顔を上げると、そこにはいつもの光景はなかった。