黒胡椒もお砂糖も



 すると一番端に座っていた新人君に、先輩だろう男性営業が声をかけたのだ。

「新垣、お前まだ無保険じゃなかったっけ?」

 その言い方で、スケープゴートだとはわかった。

 つまり、こいつの保険をこの保険屋に与えておけば一人や二人は必ず客を紹介してくれるだろうって目論見があるのが。

 だけど本当に無保険なら彼の為によくないし、私は口を挟まずにことの成り行きを見守る。

 そして、結局最後は先輩命令みたいになったけど、彼にぴったりの保険を設計して持っていくとその場で契約を貰える僥倖に浴したのだ。

 彼の言う保険料では難しかった。だけれども、貯金も何もなく、実家も母親がいるだけで迷惑はかけられないと言う彼には、なんちゃって保険は必要ない。

 もう保険に入れなくなってもこれさえあれば!という内容を、支部長を捕まえて相談に乗ってもらった上で作ったのだ。今の支部長は設計が上手いことで有名な男性で、知らなかった抜け道や特約の使い方も教えてくれて大変勉強になった。

 同行しようか?と言われたけど、それは丁寧にお断りをする。あっちの店にお客様がいない間を狙っていくので時間が指定出来ませんからと理由を説明して。

 忙しい上司にそこまでお願い出来ない。

 新社会人の初めての契約ということで、やっぱり説明にも力が入った。保険料は少しばかり上がったけれど、どうしてもつけたい特約に関しては詳細に説明した。

 どうかな~お金的に無理かもね、とちょっと思っていたのだけれど、納得して貰えて即契約となり、円満に終了。