・・・そのことに、彼らが多少飽きていたとして・・。

 逃げる女が珍しいってことか!?

 ガーン!!頭の中で盛大に鐘を鳴らして、私は給湯室の壁に額をぶつける。

 うっそ、だって、そんな、逃げるしか手がないじゃん・・・。他にどうしろと言うのだろう。私は地味でいいんです。自分の食い扶持を確保したいだけなんです~。

「・・・ジーザス・・・」

 誰もいない給湯室でまた呟きが漏れた。

 目立ちたくない私は彼等からは逃げると決めたのだ。からかわれるのはもうたくさんだ。

 まだ男にかまけている暇なんてない。折角仕事に精を出し始めたのだから、ここで頑張って成績の取れる営業になり、それを軌道にのせて、生活にも身体的にももっと余裕を出したいのだ。

 そして、あの暗くて小さな部屋を出て、日当たりも風通しもよい部屋に引越しもしたい。

 離婚の辛さは2年は持続するってどこかで読んだことがある。でももう私は暗さには十分浸ったはずだし、そろそろその過去からも離れて太陽の光を浴びたいのだ。

 夫だった彼とは全然会ってないし、私には私の道がまだあるはず――――――――



「いってきまーす」

 上司に声をかけて営業鞄を持ち、マフラーとコートで装備して事務所を出る。

 エレベーターホールで奴らに会わないかとドキドキしたけど、多忙の営業である彼等はすでに出かけた後のようだった。よしよし。