・・・ま、若干困ってるんだけど。
朝飲んだコーヒーのカップを片付けるために給湯室へ向かいながら、私はうんざりとしてため息を零す。
平林さんは高田さんを私にたきつけて喜んでいるように思える。高田さんもそれを無視せずにのって私をからかっている。・・・信じられない。高田さんて、そんなノリのいい男には見えないけど。むしろ無口で無愛想とくれば、普通はのらないんじゃないかと思うけど。
うーん、良かった、営業部が隣とはいえ別々で。
彼等の行動が理解出来ないので、ため息の日々なのだ。もう放っといてくれないかな~。
私はそんなに男性経験が豊富ではないし、イケメンに対する免疫はほぼゼロと言っていい。あんまり近寄られると挙動不審になること間違いなしだ。
それに、目立つ。
やだやだ、それは勘弁。
一人でバカみたいに頭を振ってハッとした。
・・・もしかして!
挙動不審で赤くなって逃げる私だから楽しいのだろうか。
「・・・え、そうなの?」
思わず立ち止まって呟いてしまった。
だって、彼等は男性営業部で仕事をしてはいるけれど、外に出たら会社の女子社員や事務員や他の会社の女性なんかによく話しかけられている。高田さんは無愛想にスルーしたりしているけど、平林さんはあの性格なので誰とでも楽しそうに話し、彼女達を散々笑わせてから立ち去る。
完璧な化粧に素敵なスーツ姿の若い女性達が、超可愛いキメ笑顔で彼等を取り巻いている。
彼等がいると周りの女性の嬌声で場所が判ったりするくらいだ。