呆然としている間に、高田さんは長い指を出して私の手から透明マニキュアをするりと掴み取った。

「―――――え?いや、あの―――――」

 ストンとしゃがんで、高田さんはマニキュアの蓋を開けている。

 ちょっと待ったー!!仰天だよ、おい!

 目の前にやたらと素敵な美男子が座っている。その艶のある黒髪が揺れるのを見て、眩暈を覚えてしまった。

 ・・・って、クラクラしてる場合じゃないわ、私!イケメンだろうがぶ男だろうが、恋人でもない人に足を触られるわけにはいかない。

 それに通りすがりの人ならまだともかく、奴は同僚なのだ。しかも、いつでも注目の的ってオプションつきの。

 泡食って、急いで足を引っ込める。ソファーに座った形のままで、パッと避けた。

「たたたたたたっ・・・高田さん!」

 声が上ずってしまったのが悔しかった。

「逃げたら出来ませんよ」

 マニキュアの刷毛につく液の量を加減しながら彼が静かに言う。

 いやいやいや!やってもらわなくて結構ですから!

 と言うか、どうしてマニキュアの扱いに慣れてるのよこの男!

 今度こそ本当に真っ赤になって、私はヒールを脱ぎ捨てて両足を体の下に隠し、ソファーの上で正座の形を取る。

 とにかく触られる前に隠してしまおうと思って。変な格好だけど、仕方ないではないか!

 しゃがみ込んだままで顔色一つ変えずに、高田さんは私を見上げた。

「・・・出来ないんですけど」

「しなくていいですから!!」

 どうしてあんたがするのよ!ってか、何がどうなってるのだー!!