私は彼を見上げる。また涙が戻ってきてしまっていた。このままだとアイメイクが崩れて台無しじゃない、もう本当、格好つかないんだから、私ってば。

 小声で聞く。

「・・・・・嫌だと言ったら止めてくれる?」

 彼は笑った。スタンドランプの明りでさらにハッキリと整った線を際立たせて、美しい笑顔で私を見下ろした。

「何言ってるんですか止めませんよ」

「え」

 唇をギリギリまで近づけて、吐息で誘う。そのままで低く呟いた。

「・・・・俺は待つだけ。途中停止はしたことがないんだ」

 言ったでしょ、本気だって。

 そう聞こえた。だけどすぐに嵐の中に消えて行った。

 唇に、首筋に、熱い熱い口付けを受ける。

 2年目の離婚記念日を祝うために用意した高いドレスもストッキングもアクセサリーも下着も、何が何だか判らないうちにどこかへ行っちゃって、もう私は夢の中。

 グリューワインで温められただけじゃない熱を持って、高田さんの指が私の肌の上を滑る。

 そのあとを薄い唇が追いかける。

 ピリピリと科学反応を起こして私の体は反り返る。