黒胡椒もお砂糖も



 エレベーターの中で近づく彼の唇から吐息が零れる。それは柔らかくてスパイシーな香りがした。

 ・・・そうか、ワインと香辛料を混ぜた飲み物だって言ってたっけ―――――

 ここは、カメラはあるけど会社じゃないから。

 そう言って、ぼーっとしたままの私を抱きしめる。

 高田さんの髪からは外の冷たい空気の香りがした。

 うーん・・・温かい。誰かに抱きしめられるなんて久しぶり~・・・。

 また飲みまくったアルコールで若干夢心地?それともこれは夢?温かい指先と、吐息と、唇と・・・

 ああ、夢だとしたら・・・夢であるなら、覚めませんように。


 私もうちょっとここに―――――――




 夢みたいだ、と思ったままで、フラフラと私は彼に引っ張られる。

 陶子が用意してくれていた部屋の鍵はそのまま高田さんが持っていたようだった。鍵が開けられ、部屋の中へと導かれる。

 ・・・あれ~・・・?ぼんやりしたままでここでも素敵な夜景が広がる大きな窓が見えて、私はそのまま窓辺に近づいた。

 さっきよりも・・・風景が、やたらと近づいたような・・・。

 彼はコートとジャケットを椅子の背にかけて、ベッドサイドの明りだけをつけ、大きなベッドに座っていた。

 私は相変わらずぼんやりと夜景を眺める。

 うーん・・・と。そうか、もう取られていた部屋に入ってしまったんだな。おっどろき~、私が、誠二以外の人とホテルの部屋にいるなんて・・・。