ええと・・・どうしてこうなったんだっけ?
ってーか、もしかしてさっき、私ったらこの人とキスとかしちゃったんだった?それともあれは積もり積もった欲求不満が見せたヤバイ幻?
だけど確実に舌が覚えている感触で、それを認識して更に頭が火を噴いた。
ああ~・・・ダメだ、くらくらくら~・・・。
さっきは走り抜けてきたホテルに向かって今度は二人でゆっくり歩く。
高田さんは鞄を持ってなくて、実に当たり前のように私の手を取って繋いだから驚いた。
・・・あの、お手手、繋ぐんですか?ここで?まだ会社の近くなんですが?だけどそれを言葉にする勇気はなかった。
せめて動揺を悟られないようにと私は下を向いて歩く。脳内年令は小学生まで退化してしまった感じだ。
まだ風は冷たい春の夜、私は一人でぽっかぽか。ストール、もうホテルにあげちゃおうかな。別に寒くないよ私。
行きは走っても走っても全然進まなかったように感じたのに、帰りはあっさりと、実に簡単にホテルへ到着する。
すれ違ったカップルが高田さんを目で追って振り返ったのに気付いた。
カフェから出てきた女性も、ベルボーイも。
・・・やっぱり、目立つぜこの男。その男に手を引かれる私も、ついでに目立つ。うう・・・。
エレベーターを降りてバーへと入る。
店内を見回しても既に平林さんと陶子の姿はなかった。
「・・・あ、帰っちゃったんだ・・・」



