「・・・はい?」

 私はつい瞬きをする。一瞬で耳の中で響いていた鼓動もすっ飛んだ。

 高田さんは私の手を引いて自分の隣の席に座らせると、微笑したままで言った。

「知ってましたよ、尾崎さんが俺を好きなこと」

 ぶっ・・・。ごほごほと私は咳払いをする。いやいやいやいやいや!どういうことよ、それ!?

 ちょっと、緊張してたのもどっかに飛んでいっちゃったじゃないのよ~。何よこの冷静な上から目線。ムカつく、かなりムカつく~!

 コホン、ともう一度咳をして眉間に皺を寄せた私に高田さんは静かに言う。

「えらくお洒落してますね」

「ええ、まあ・・・」

 まだ拗ねた気分でクラッチバックを机に置こうとして、ハッと気がついた。

「・・・あ、ストール忘れてきた」

「どこに?」

 高田さんが聞くのに、ガッカリして私は答える。

「〇〇ホテルです・・・。今日はあそこのバーで女友達と飲んでまして」

 もう~・・・急いでここにくることばっかり考えて、ストールを忘れてきた・・・。詰めが甘いわ、私。しかも何か必死な感じをみせてしまったのが嫌だし・・・。

 汗までかいちゃったぜ。

 ウダウダ考えていたら、高田さんの声が聞こえて顔を上げた。

「そこへ、平林が行ったんですか?」

 ―――――――うん?

「・・・どうして知って――――――――」

 その時目の前で、うちの会社を代表するイケメン営業である高田さんが、ハッキリと笑った。

 瞳がキラリと光る。