黒胡椒もお砂糖も



 私が首を傾げると、平林さんがふう、と息をついて、話し出した。

「説明は勿論するんですよ、やつだって。だけど、しても10分じゃないかな」

 ・・・10分?私は唖然とする。だって普通に隅から隅まで言うだけでも軽く2時間はかかるけど!?って。

 陶子は完全に傍観者に徹することにしたらしく、自分のシャンパンを飲みながら黙って聞いている。

「挨拶、その後は簡単にメリットとデメリットを3つずつ。それでヤツの説明は終わりです」

 ―――――――わお。それは、また、簡潔な・・・。

 私が驚いて姿勢を正すと、平林さんは苦笑した。

「客のほうがいくらでもって時間をくれていたとしても、保険の説明をマトモにしようとしたら時間ではなく理解がどうしてもついていかない。それでは結局認識不足となって、いずれ不満が出る事態になった時にそれが怒りのもとになるんです。だから、初心者でも判りやすい量としては6点まで。メリットデメリットを3つずつ言えば、そこだけは確実に理解して貰える」

 平林さんはそう説明する。大変判りやすかった。営業の数だけ営業方法はあるはずだが、最初に会社の研修で教えてもらうやり方をずっとしている営業は多いだろう。

 保険設計書と呼ばれる10ページほどの冊子を使って、その端から端まで説明するのが原則だ。ただし、今の保険は複雑で、色んなオプションが組み合わさっていて事例によって出たり出なかったりするので、全部を説明するなんてことは出来ない。