「尾崎さーん!お願い~!あと二人なのよおおおお~」
「だってお客さんとの約束もあるし」
「それは大丈夫じゃない!責任開始期なら――――――」
「いえ、契約年齢上がるぴったり半年前でって約束で頂きましたので」
それは嘘だけど、この際何でも利用する。転職組みで仲のよい同期も居なければ旅行にさほど興味もない私は施策に感心がない。
すみません、副支部長、でも私には3月分のほうが大事。
ガックリと肩を落として副支部長は立ち上がる。
「・・・仕方ないわね。今日ペアで追い込みしている人たちに期待するわ」
とぼとぼと席へ戻る副支部長を見送っていたら、隣の席から弓座さんが話しかけてきた。
「尾崎さん好調ですね~!いい職域開拓したんですか?」
私はまた曖昧な笑みを浮かべた。
「・・・そうなの。運よく貰えたんです」
「そこって男性ばかりの場所ですか?」
弓座さんの口調に粘っこい何か不快なものを感じて振り返る。まだ28歳の彼女は意地悪そうな顔をして私に笑いかけていた。
――――――――おおっと~?これは、まさか・・・・。
私は慎重に口を開いた。
「・・・不動産屋さんだから、そうね、男性営業が圧倒的に多いわね」
「ふーん」
ニヤニヤと微妙な笑みを口元に浮かべて、弓座さんは言った。