それでも何とかのまれたくない私は、水面すれすれだけれど足掻いてみる。

「・・・・平林さんの都合がついたら、うちの支部に顔出してくださったら・・・・」

「だって殆ど会社に戻ってこないけど?契約はまとめて週末に出してるし」

 えー!何だってー!そんな、契約処理する事務員さん泣かせなことしてるのか、こいつは!

「・・・なら会社のパソコンの社内メールで・・・」

「あ、知らないんですか?あれ見張られてるんだよ。飲みに行きましょうなんて社内メールで送れないでしょうが。きっと尾崎さんに届く前に本社に消されると思うし。・・・というか、尾崎さん俺と噂になってもいいんですか?」

 よくない。

「良くないです」

 はい、と笑って頷いて、平林さんは携帯を振ってみせた。

 ・・・・・・くそう。狸親父め・・・・。

 敗北感をかみ締めながら私は自分のメルアドを教える。意地でも電話番号は教えてやらないぞ。

 あははは~と笑って、望みのものをアッサリ手にいれた平林さんは手を振ってから第2営業部へと戻っていく。

 私は悔しさに唇をかみ締めながらコーヒーを淹れに給湯室へ向かった。

 ・・・平林め!