妻のことはないがしろにしていたわけで、それは褒められることではないにせよ。私は本当に気付かなかったけど、誠二は物凄く悩んでいたのかもしれない。あの春の日。私に別れを言う寸前に。あの人は、泣きたかったのかもしれない。
苦しんだのかもしれない。
「でも、もうどうしようもない・・・」
結局私達はうまくいかなかったんだから。
暴れたことは大人げなかった。れっきとした犯罪だし。完全に血管が2,3本切れていたんだろうな、私。でも申し訳ないと思う反面、ちょっと楽しかったのだ。
すっきりした。1年半分の恨みをものに当たってしまったわけだ。しかしコントロール悪いよね、一個も誠二に当たらなかったじゃないのよ。そう思ってちょっと笑った。
そしてそのまま寝てしまった。
ホットカーペットの上で、毛布だけ体にかけて、化粧も取らずに。
後で考えたら風邪を引かなかったのが不思議だ。
今日の大掃除が終われば、保険会社は年末年始の休みに入る。
もう殆どの人は営業活動を終えていて、自分の机の周りの片付けをしたりロッカーの整理をしたりしていた。
私も何とかカレンダー配りも終了していたし、今のところ急ぎの給付金手続きなどは何もない。もう今日は机の整理をして、夕方皆で年越しそば代わりのカップ蕎麦を食べて挨拶をしたら帰宅だ。
明日は実家へ戻るし、帰ったら家の片付けと荷物の整理をしなければならない。だけどももう今年は仕事がないと思って、気分は上々だった。