黒胡椒もお砂糖も



「浮気をしている時点で私の立場も愛も尊厳も、全部全部ずたずたにしているとは考えなかったの?!」

「―――――言うのが遅かったとは自覚している。だけど――――」

「だけどじゃねえよっ!!」

 バン!と私は両手でヤツの机を叩いた。その音にまたヤツの体がビクンと跳ねる。

「あんたは結局言わなかったのよ!私はさっき友達から聞いたの。皆私の為を思ってずっと内緒にしてくれていた。しんどい秘密を抱えて、皆苦しんでたのよ!」

「美香――――――」

「私はあんたが優しかったんだって思おうとしてたのよ!精神も壊して体も壊した、だけどあんたは悪くないって、不倫をする前にちゃんと結婚を清算したんだ、それは私への優しさなんだって、そう思って自分を慰めてきたのよ!それを、あんたは、よくも―――――――」

「美香は悪くないって言ってただろう!全部俺のせいだって、ちゃんと―――――」

「嘘ついたことに怒ってるのよ、このバカ男!!」

 血走った目で周りを見回す。何か―――――何かこのバカに投げつけられるものは―――――

 とりあえず目についたペン立てを引っつかんで彼に向かってぶん投げた。うわあ!と叫びながら誠二はパッとそれを避ける。

 思ったより凄まじい音を立ててそれは壁にぶつかる。いいぞ、いい手首のスナップだったわ、私。それに避けられちゃったけど、ヤツはビビったようだ。

「おい―――――」

「やかましい!!」