悪いけど、今日はこれで。そう言うと、後ろも見ずに走り出した。
飲んだビールやお酒は完全に消えていた。的確に表現するならば、この時の私は怒り狂っていたからだ。
お腹の底の方でマグマみたいなドロドロの何かが息をしていた。
誠二!あの・・・くそ野郎!!って。怒髪天きていて、後ろで呼ぶ陶子の声はすでに聞こえてなかった。
私が知っている誠二は街で設計事務所を開いている。もし今でもそこにいるのならば――――――殺してやる。
殺気だった私は本当にそのまま元夫の事務所に奇襲をかけたのだ。
離婚する前以来来ていなかった田西設計事務所は変わらずそこにあって、年末の夜の9時過ぎにまだ明かりはついていた。
女友達に会うためにお洒落をしてきていた私は、普段はかないような高いヒールで床を打ちつけながら事務所の階段を上る。夜のドアのセキュリティーロック番号はまだ覚えていた。しかも、変更されてなかった。
そんなわけで易々と私は事務所に侵入して、明りがついている事務所のドアを乱暴に押し開けた。
バンっ!!と結構な音がしてドアを開ける。本当は蹴っ飛ばしたかったけど、それで開かなかったら格好がつかないから止めたのだ。
「うわあっ!?」
実に久しぶりに見る元夫の、田西誠二が突然の侵入者に驚いて椅子から飛び上がった。
「・・・なっ・・・な、何・・・って、美香か?」
驚いて椅子から立ち上がったままの中腰の格好で、ぽかんと口をあけてこっちを見ている。



