「美香、私から。幸久、早く行って。また電話するわ」
「ああ・・・うん。ほんと、わりい」
幸久はくるりと身を翻すと、そそくさと立ち去った。
彼のコートを掴んでいた手に冷たい風が吹きつける。私はその手を下ろせないままで突っ立っていた。
「・・・美香」
後ろから陶子が静かな声を出す。
私はやっと手を下ろし、ゆっくりと振り向いた。そこには酔いが完全にさめたらしい厳しい顔をした陶子。
私はきっと今、真っ青なんだろう。彼女の瞳に痛ましげな表情が浮かぶ。
「・・・何を知ってるの、皆は?」
幸は、一体何を言ってたの?
私の声に、すうっと息を吸った。そしてため息をついてから、私の両手を握って、陶子は言った。
「・・・誠二はずっと浮気していた。その相手に子供が出来た。だから、美香と別れたのよ」
確かに、その言葉は聞いていた。
だけれども理解がうまく出来なかった。
「――――――え?」
陶子の瞳にはまた水が張り付いている。彼女は私の両手を握ったままで続けた。
「だから、それを知って、仲間は誠二を見限ったの。あいつは美香を裏切っていた。それで皆離れたのよ」
・・・誠二は、浮気、していた・・・。
相手に子供が出来て・・・それで、それで、私と別れた・・・?



