「いいのよ、昔の男のことなんて。それよりあんた、前よりちょっと綺麗になったかもって思ってたんだけど。何かあったの?もしかして、もう彼がいるとか?」
いつもの無邪気な瞳になって、陶子が振り返る。
私は少しばかり気持ち悪かったけど、その感情は酒と一緒に飲み下した。
彼女が何を知っているにしても、それは私は知らない方がいいらしい。なら、聞かないでおこう。そして忘れよう。それよりも―――――――
「・・・相談に乗ってくれる?」
小声で聞くと、陶子は身を寄せてきた。
「何何?もしかしてあんた照れてんの?うわ~、何事よ!」
「絶世の美男子に私が好かれてるって言ったら、陶子信じる?」
「絶世?」
私は頷いた。
「そう。うちの会社で全国レベルで有名なイケメン、独身、31歳」
彼女はパッと半身ごと私を向いた。
「詳細に白状しなさい!これは、命令よ」
大学の時の彼女の口癖だった。
私はそれだけで、大いに笑った。
丁度持ってきていた広報で壇上表彰者の写真があったので見せながら話すと、陶子の盛り上がりは最高潮に達した模様だ。
広報を私から奪い取ってガン見しながら、周囲を気にせず絶叫した。
「おおおお~っ!!!!」
店の大将がカウンターの中で苦笑している。目があった私はそれに頭を下げながら、ボリューム、ボリューム、と陶子の肩を叩く。



