黒胡椒もお砂糖も



 ビールを持ってきたバイト君にありがとー、と礼を言って、陶子は一気にビールを煽った。いい飲みっぷりだ。

「誠二・・・・あのバカ野郎。あんた達の離婚は仲間でも噂になってね、あれ以来ほとんどの子が誠二とはもう連絡を取ってないの」

「え?」

 私は驚いて顔を上げる。連絡を取ってない?・・・何で?

 共通の友達ではあるが、元々は陶子もヤツと同じゼミ仲間だったのだ。誠二の彼女として私と知り合ったに過ぎず、彼が中心で仲間が集まっていたようなものだったから意外だった。

 今日陶子と飲むことは、回りまわって彼にも伝わるだろうと思っていたんだけど・・・違うみたい。

 私は別の会社で頑張ってるって、それなりに幸せだよって、仲間からでも伝わればいいな、と実は思ってたんだけど・・・。

 でも私がそれを言うと、陶子は釣り目の瞳をキッと上げて言い放つ。

「もう誠二のことは忘れなさい。あんなバカ野郎、美香には勿体無いよ」

「――――――」

「あいつが許せないってほとんどの仲間は離れたの。あんたが元気で頑張ってるって伝えたら、皆喜ぶよ」

 私はカウンターに覆い被せていた上半身を上げる。酔いが少しだけ醒めた。

 許せないって、何よ。

「・・・陶子、どうしてそんなに誠二を嫌いになったの、皆?」

「何でもない」

 キッパリと拒否された。聞いちゃダメよ、私は話さないって意思がその横顔にはハッキリと刻まれていた。