「う、うん……」


梨穂ちゃんは頷きながらも青ざめた表情で対戦相手の亜弥ちゃんを見ている。


亜弥ちゃんの方はほぼ無表情だ。


何を考えているのか読み取れないような表情で、無言のまま部屋に入って行く。


この戦いならクラスの全員が梨穂ちゃんの勝利を願うだろう。


「なんで、あんな平気な顔してられるんだろう……」


不意に彩美がそう言った。


「え?」


あたしは聞き返す。


「亜弥ちゃんなら、泣き叫んだりすると思ってた」


彩美は部屋の中の亜弥ちゃんをジッと見ている。


確かに、亜弥ちゃんは教室内でもよく泣いていた。


そんなに大きなイジメじゃなかったけれど、ちょっといじられただけでも泣いてしまうような子だ。


それが今は部屋の中でジッと梨穂ちゃんを見つめているだけだった。


見ていても、すごく奇妙な雰囲気だということがわかる。