透明な部屋へと視線を戻すと、すでに煙は消えていた。


部屋の中で竜輔君に威嚇している結愛ちゃんが見える。


だけど……すぐに異変に気が付いた。


結愛ちゃんはさっきまでの生徒たちと同じように豹変してるのに、竜輔君は困惑の表情を浮かべているのだ。


「なに、あれ……」


あたしはそう呟き、竜輔君をジッと見つめる。


さっきたしかに煙は部屋全体に充満していたはずだ。


竜輔君は時折A組の方へ視線を向けて、大きく首を振っている。


「どうだね? 彼の方には煙の作用を半分ほどにしているんだ」


スーツの男がおかしそうな笑い声を上げてそう言ったのだ。


あたしは目を見開いて男を見た。


「彼の理性は完全には飛んでいない、そんな中のバトルということだ」


「……最低」


やっぱり<mother>はどこまでも卑劣だ。


奴隷部屋でもこんなやり方を何度も見て来た。